Integrated Report 2022
Hakuhodo DY Holdings
Integrated Report 2022

人財・サステナブル経営の強化

統合報告書2022 人財・サステナブル経営の強化ページのメインビジュアル
取締役専務執行役員
江花 昭彦

グループの人的資本を強化し、
サステナブルな成長と発展へ

マーケティング変革とイノベーション創出を生み出すためのテクノロジーへの投資とクリエイティビティの源である人財への投資を進め、当社の価値を高めるとともに、サステナビリティゴールの実現を目指していきます。

“生活者データ・ドリブン”マーケティングをフルファネルで実践

当社グループは、2024年3月期を最終年度とする中期経営計画において、「生活者発想を基軸に、クリエイティビティ、統合力、データ/テクノロジー活用力を融合することで、オールデジタル時代における企業のマーケティングの進化と、イノベーション創出をリードする。そのことで、生活者、社会全体に新たな価値とインパクトを与え続ける存在になる」ことを目指しています。
私たちは、長年にわたって生活者を深く洞察し、研究を続けながら、膨大なデータを蓄積してきました。これまでは広告会社として「こうなったらいいな、面白いな」といった「アイデア」を形にすることが求められていましたが、近年は、こうした私たちの経験や感性に加え、リアルタイムに得られる生活者データを駆使することによって、アイデアを精緻化し、社会が求めているものや喜ばれることをより具体的に実装・実現できるようになりました。わかりやすくいうなら、そのメソッドが“生活者データ・ドリブン”フルファネルマーケティングです。
膨大なデータが取得できるようになる中、クライアント企業のご要望に応えるためには、この“生活者データ・ドリブン”マーケティングをこれまでの認知を中心としたマーケティングコミュニケーション領域に限らず、「フルファネル」で実践することが重要となります。単に広告を打てば商品が売れる時代ではなくなっている中、広告だけでなく店頭やECサイトでのマーケティングなど、どのような場面でどう情報を伝えれば生活者に響くのか、認知→興味→検討からCRMまで一気通貫でアプローチし、実行することが求められているのです。

変化の兆しを掴んで未来を予測し、データやテクノロジーによってクライアント企業のマーケティングの進化、イノベーションの創出に繋げていきます

多彩な事業ポートフォリオでクライアント企業の活動全体をサポート

当社は博報堂、大広、読売広告社の広告会社3社の経営統合により、共同持株会社として2003年に発足しました。その後、DACやアイレップの連結子会社化によるデジタル領域の強化や、戦略事業組織kyuを中心とする海外事業の拡大を果たしてきました。そして現在、国内・海外における当社グループの事業ポートフォリオは、マーケティングコミュニケーション領域をベースとして、メディア領域、コンサルティング領域、ブランドエージェンシー領域、デジタルエージェンシー領域、テクノロジー領域と多岐にわたっており、クライアント企業の広告宣伝部に加え、営業部、お客様相談室、商品開発部など、企業活動全体に及ぶソリューションを提供できるまでに成長してきました。その結果、以前はメディアの売上が全体の9割を占めていましたが、現在はメディアとそれ以外の事業領域の割合が半々近くにまで変化しており、「広告会社からマーケティング企業グループ」へと拡大しています。
また、私たちの新たな提供価値となっているのがイノベーションの創出です。企業は常に新たな価値創造に取り組まなければすぐに淘汰される時代が訪れたと言えるでしょう。社会や生活者がこれから何を望むかがわからないようでは、イノベーションなど生み出せません。それには、人がどう考えるか、どう行動するかを洞察し、データを組み合わせ、次の時代を予測していくことがより重要になります。膨大なデータそのものに価値があるのではなく、そこから何かを読み取って、つかみ取る能力にこそ私たちの最大の強みがあります。生活者や社会を動かす広告づくりをしてきたクリエイティビティノウハウを活かし、変化の兆しをつかんで未来を予測し、データやテクノロジーを駆使していくことにより、クライアント企業のマーケティングの進化、イノベーションの創出へとつなげていきます。

拡大するマーケティングサービス

拡大するマーケティングサービス

多様な人財の採用・育成と環境整備を推進

イノベーションを生み出していくためのクリエイティビティを発揮する仕組みとは、「粒ちがい」の人財が掛け合わさることによって新しい知恵やアイデアが生み出される「共創モデル」と言えるでしょう。広告領域以外の人財や、独自の価値観を持つ人財、DE&Iを体現する多様な人財がぶつかり合ってこそ、卓越したアイデアが生まれ、私たちの提供価値を高めることができるのです。
中期経営計画では、重要なテーマの1つに「人的資本の強化」を掲げ、人財への投資をさらに推進しています。また、クリエイティビティを最大限に発揮できる環境づくりにも注力しています。フレキシブルな勤務時間、テレワークの有効活用、育休制度をはじめとした休暇取得制度の推奨など、多様な人財が働きやすい環境を整備し、社員が自由にやりたいことを行い、アイデアを出し合うことで、より良い企業活動につなげ、その結果としてより良い社会を実現する力を引き出していきます。

“もっと先のこと” “もっと新しいこと” を生み出すグループ

私たちには、イノベーティブで先取的な風土が根付いており、社員は「こういうことをやればもっと面白くなるのではないか」「こういうニーズをつかんだらもっと良くなるのではないか」といったことを様々な領域でいつも考えています。テクノロジーの進化や領域の拡大に伴って、新しいことに対してチャレンジする機会はさらに多くなりました。もっと先のこと、もっと新しいものを考えられる企業グループになれると考えています。
そして、その強みをよりいっそう活かすためには、テクノロジーが不可欠です。もはや感覚や感性だけは通用しない時代です。とはいっても技術やデータだけでは、生活者にとってより良いものは生まれてきません。大切なことは、クリエイティビティとテクノロジーを掛け合わせて、生活者にとって本当に良いアイデアを具現化するプロダクトやサービスをつくり出すことであり、そのための取り組みをさらに強化していく必要があります。
例えば、グローバルな戦略事業組織kyu傘下のデザイン/イノベーションファームIDEOは、ヒューマンセントリックで人間を中心に考えるデザインシンキングという思想や企業哲学を持っていますが、さらにテクノロジーを活用することで、新たなアイデア、新たなビジネスを展開することを進めています。
国内では、2022年4月にグループのテクノロジー開発と共通基盤のコアとなる博報堂テクノロジーズを設立しました。グループ内リソースを集約するなど200人規模のテクノロジー専門会社としてスタートし、新たに100人規模の外部人財の採用・育成を進めています。まさにクリエイティビティとテクノロジーを融合し、マーケティングビジネスのイノベーションを加速させる基盤組織と言えるでしょう。
さらに、広告ビジネスを超えた新規事業開発を志向する組織である博報堂と博報堂DYメディアパートナーズの「ミライの事業室」では、我々自身がオーナーとなって多様な外部パートナーと連携した大型事業の実現を目指しています。最も強みとする生活者発想というクリエイティビティを活かした事業創造を通じて、未来の生活創造、社会創造に挑戦しています。
また、未来創造の技術としてのクリエイティビティを研究・開発し、社会実験を行う研究機関「UoC
(UNIVERSITY of CREATIVITY)」では、世界中の『知』を集めています。グループ社員はもとより、社外の人々ともコラボレーションすることで新たなアイデアを生み出し、グローバルで無限の『知』を追い求める場にしたいと考えています。

大切なことはクリエイティビティとテクノロジーを掛け合わせ、生活者にとって本当に良いアイデアを具現化するプロダクトやサービスをつくり出すこと。そのための取り組みをさらに強化していきます

新たな領域へのチャレンジ

新たな領域へのチャレンジ

サステナビリティゴールを見据えた取り組みの推進

中期経営計画における重点施策の1つが、「サステナブルな企業経営のための基盤強化」です。当社グループが社会をより良くするためには、まず私たち自身がサステナビリティ先進グループになっていくことが大切です。
2022年4月、「博報堂DYグループサステナビリティ委員会」を発足し、「サステナビリティ推進室」を新たに設置しました。同部門を中心に、経営戦略と一体となって、ステークホルダーとの対話や脱炭素に向けた企業としての対応、そして、サプライチェーンや人権、ダイバーシティといった経営テーマへの取り組みを推進していきます。
2023年3月期においては、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に則した目標設定および情報開示を実施し、新たに温室効果ガスの総排出量を指標とした削減目標を設定しました。具体的には、2030年度のCO2排出量(スコープ1+2)を2019年度比50%削減し、さらに2050年度にカーボンニュートラルを達成することを目標としました。この目標達成に向けて、オフィスでの再生可能エネルギーの導入など、さらなる環境負荷低減のための適切なアクションに取り組み、脱炭素社会の実現を目指していきます。
また、2023年3月期には、マテリアリティの再整理を行うとともに、モニタリング指標を新たに設定しました。新たな体制・方針のもと、サステナビリティゴールである「生活者一人ひとりが、自分らしく、いきいきと生きていける社会の実現」に向けた取り組みを推進し、新たに特定した重要課題については、次期中期経営計画に組み込んでいく考えです。

変化の兆しを掴んで未来を予測し、データやテクノロジーによってクライアント企業のマーケティングの進化、イノベーションの創出に繋げていきます

まずは私たち自身がいきいきと過ごせるかどうか

取締役専務執行役員 江花 昭彦の写真

私たちのサステナビリティゴールとは、一人ひとりがより良く生きていくこと、どこにいても心地良くいられることにほかなりません。だからこそ、当社グループは生活者発想を大切にしています。
サステナビリティゴールの実現のためには、まず私たち博報堂DYグループの社員一人ひとりが、どのライフステージにおいてもいきいきと暮らせていなければいけません。それができて初めて、仕事や生活の中で周囲の人々や社会に対してポジティブな影響を与えることができるのだと思います。社会に新しい価値とインパクトを与えるアクションとしては、既に様々な企業や団体とともに当社グループが中心となって取り組んでいる事例も数多く生まれ始めています。次章ではそのうちのいくつかをご紹介したいと思います。
サステナブルな経営環境をさらに整備し、社員のサステナビリティ意識をより高めていくことが、より良い社会につながっていくと信じて、これからも当社グループならではのサステナビリティ活動を追求していきます。