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博報堂DYグループの
テクノロジー戦略

取締役常務執行役員 CTO 安藤 元博氏の写真

クリエイティビティと
先進テクノロジーを掛け合わせ、
社会・企業と生活者の価値創造を実現します

取締役常務執行役員
CTO

安藤 元博

目指すのは「博報堂DYグループ=テクノロジーに強い企業」

当社グループの事業領域は従来の広告・マーケティングにとどまらず、クライアント企業の経営のパートナーとして事業課題全体、そして社会課題解決に向けたソリューション提供にまで拡大しています。その背景にあるのは、生活のオールデジタル化です。広告・マーケティングにおいては、私たちが長年蓄積してきた生活者データとクライアントの持つ顧客や販売に関するデータ、そしてメディアやマーケティングに関するデータを安全な形で連携し活用する技術開発と実践に、いち早く取り組んできました。現在その中核となっているAaaS(Advertising as a Service)は、業界でも先進性を認めていただいており、強力に推し進めているところです。さらに、クライアントの事業課題や社会課題においても、デジタル・テクノロジーは大きな力を発揮します。私たちの固有の強みである生活者発想に基づく、クリエイティビティとテクノロジーを融合した独自のソリューションの開発・提供に取り組んでいます。
CTOとして目指すのは、広告業界のみならず、広く社会全体に「“博報堂DY”=テクノロジーに強い企業」と思っていただける企業グループになることです。よりいっそう、グループのテクノロジー領域を強化し、広告・マーケティング領域と同様にクライアントの事業パートナーとしてもトップクラスのプレゼンスを確かなものにしていきます。

グループ全体で生成AIに注力

当社グループでは、注目が高まっている生成AIへの取り組みにグループ全体で注力しています。2022年に発足したグループ横断の研究開発組織「Creative technology lab beat」を中心に、AIなどのテクノロジーを活用し、効率性の追求だけでなく生活者の心を動かすクリエイティブを生み出すための先進的な研究、プロダクト・ソリューションの開発を行っています。広告制作では、デジタルクリエイティブのプラニング、生成、評価を果たすプラットフォームを開発し、現場での活用も進んでいます。加えて、ブランディング、Web制作、動画制作、CRMなどの各領域でのクリエイティブ業務プロセスをサポートするAIプロダクトやLLM(大規模言語モデル)を用いたプラニング支援ソリューションの開発に、継続的に取り組んでいます。
従来のAIが既存のデータにより認識、判別、分類、予測などを行うのに対し、生成AIはデータのパターンを学習し、いわば無から有を生み出すことが最大の特徴です。生成AIの活用には業務の効率化とサービスの高度化・拡張と、大きく2つの目的がありますが、特にサービスの高度化・拡張において軸となるのが、当社独自の強みである生活者発想です。人がテクノロジーに刺激され、これまでになかったクリエイティビティを発揮していくこと、すなわち「技術と人のクリエイティビティの共創」が生まれることを念頭に、生成AIの開発・活用を推進しています。

外部組織とのアライアンスを積極的に推進

変化のスピードが激しい技術領域であるWeb3.0やNFT(非代替性トークン)、XR(クロスリアリティ)およびメタバース領域に関しては、自社開発に加えて、先進的な技術を持つスタートアップ企業や研究機関とのアライアンスにも積極的に取り組んでいます。

Web3.0領域

次世代のインターネットとして注目を集めるWeb3.0は、ブロックチェーンをはじめとする分散技術の活用により、ユーザー自らがデータを管理・共有する世界へと進化しています。Web3.0サービスを開発する博報堂キースリーでは、「日本から世界を代表するWeb3.0サービスを生み出す」ことをビジョンに掲げ、web3ハッカソンの企画・運営に加え、企業向けデータウォレットサービス「wappa」や大手企業とWeb3.0関連のスタートアップ企業のハブとなるサービス「KEY3 STUDIO」を提供しています。

KEY3 STUDIO

NFT領域

NFTは、ブロックチェーンを基盤にして作成される代替不可能なデジタルデータであり、データのオリジナル性や希少性の証明を可能にする技術です。「ミライの事業室」では、2022年よりプロスポーツとファンのエンゲージメントを高めるNFTコンテンツ発行プラットフォーム「PLAY THE PLAY」の提供を開始しています。スポーツ競技団体や放送局などが保有する映像をNFT化し、グッズ、アイテム、トレーディングカードなど、希少性の高いアイテムをファンにお届けしています。

XR・メタバース領域

XR・メタバース領域では、リアル体験の拡張、バーチャル空間とリアル空間をつなぐ体験設計を提供する技術活用や社会実装実験が進んでいます。博報堂テクノロジーズでは、ユーザー自身の3Dアバター生成や、自らの価値観や世界観を表すキャラクターアバターの作成、複数のアバターを使ったサービスなどが可能となる独自のサービス「アバターサービスプラットフォーム構想」の実現を目指しています。3Dアバター活用の先進事例として、博報堂グループの定期健康診断で従業員自身の3Dアバターを生成し、自身のアバターがパーソナルトレーナー「じぶんトレーナー」となり、目指すべき体型を可視化したり、改善に向けたエクササイズ等を教えるなど、社員一人ひとりの健康をサポートする取り組みを行っています。

じぶんトレーナー

また、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC)ではメタバース領域のメディア専門事業会社「ARROVA(アローバ)」を設立しました。ARROVAはゲームプラットフォームや、AR・VRといったXR領域、イマーシブメディアと呼ばれるバーチャルコンテンツを新たなメディア領域と見立て、3D空間を活用したメディアプロダクトの開発や広告サービスを展開していきます。ARROVAでは既に広告枠の開発・販売などによる広告出稿の実績が多数あり、また、XR技術やメタバース領域でのサービスやコンテンツ開発のコンサルティング事業も展開しています。

ARROVA事業概要

ARROVA事業概要

差別化を実現するプライバシーテック

テクノロジー領域における当社グループの優位性の1つがプライバシーテックです。生活者のプライバシー意識の変化に伴い、個人情報保護法やサードパーティクッキー規制の動きなど、プライバシー保護に関する規制や要請が高まる中、企業のマーケティング活動においてファーストパーティデータの活用が重要なテーマになっています。ただし、その活用に際しては個人情報を取り扱うリスクが伴うため、適法性の担保と個人特定性の排除をしたデータに加工し、組み合わせて活用する技術(データフュージョン技術)が必要となります。当社グループは長年にわたり、このデータの安全な利活用技術の開発・改良と実装に注力してきました。その取り組みはマーケティング業界の中でもトップクラスであると自負しています。また、当社グループは、クライアント企業の購買・顧客などのデータに、当社グループが長年蓄積してきた生活者の意識・行動などの生活者データとメディアや市場のデータを掛け合わせてマーケティングを高度化する技術・ナレッジにも定評があり、他社との差別化につながっています。
当社グループは、プライバシー保護と生活者の利便性を両立するために、データの適切な利活用に向けたデータ連携技術を蓄積し、これまでに10件を超える特許を取得しました。さらには、秘密計算技術の高度化に向けた同分野の先進企業である(株)Acompanyと提携したほか、生活者にとって最適な同意のあり方の研究など、プラットフォーマーやデータホルダーを含む業界横断での技術研究にも取り組んでいます。今後も、生活者にとっての価値創造を中心に据えた技術開発を進めていきます。

企業・生活者間で価値創造するための
テクノロジーを追求

私たちが先進技術の開発と活用に関して最も重視しているのは、単に便利なテクノロジードリブンのサービスやソリューションをつくるということではなく、テクノロジーの適切な活用によって企業と生活者の間で新たな価値を創造するということです。技術は単に、人が一方的に、便利に使うだけのものではありません。人は自らつくり出した技術によって、人としての新たな能力に目覚め、進化する、という側面を持っています。それが人と技術の関係の長い歴史であり、技術と人の社会は互いにそのような「再帰性」を有しています。生活者発想をポリシーとして持っている私たちは、そのような思想のもとに先端技術に取り組み、“人のクリエイティビティを活かす技術”にこだわっていきます。そうすることで、“博報堂DY”が世界の中でユニークな“テクノロジーブランド”になることを目指していきたいと思います。