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博報堂DYグループの領域拡大

取締役専務執行役員 江花 昭彦氏の写真

事業領域の拡大を通じてグループの提供価値を強化
根幹には“生活者発想”

パートナー企業との共創やM&A、グループシナジーの強化によって、
マーケティング実践領域やイノベーション領域への拡大を
推進しています。

取締役専務執行役員

江花 昭彦

クライアント企業の課題の複雑化・多様化に
対応するための領域拡大

博報堂DYグループの事業は、広告を中心とするマーケティング・コミュニケーション領域におけるクライアント企業に対するサービス提供を出発点としています。2003年にマーケティング・コミュニケーション領域に軸足を持つ博報堂、大広、読売広告社の3社が経営統合し、博報堂DYグループが発足しました。
その後、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC)やアイレップの連結子会社化をはじめとするデジタル領域の強化や戦略事業組織kyuを中心としたグローバル事業の拡大、さらにはコンタクトセンターや人材派遣企業等をグループ内に取り込むなど、事業領域を次々と拡大しています。その背景には、クライアント企業の課題が従来のマーケティング・コミュニケーション領域には収まりきらない範囲にまで多岐にわたって複雑化・高度化してきていることがあります。
デジタル化の加速に伴って、企業が生活者から選ばれ続けるために対応すべきことが格段に広がりました。インターネットと常時接続した生活者と企業との関係は、情報を一方的に流す単なる「接点」ではなく、相互に情報のやりとりをする「インターフェース」に進化しました。また、生活者の行動が購買時点だけでなく購買前、購買後までトレース可能となり、それぞれの時点での施策をデータと連携させながら最適化させるなど、企業のマーケティングニーズは大きく変化しています。また、そのような環境のもと、既存の事業に限界を感じ、新たな時代に即した事業やイノベーションを追求する企業も増えてきています。
当社グループはこうしたクライアント企業が抱えている新たな課題、あらゆるマーケティングニーズや企業のイノベーション/新規事業開拓のニーズに応えられる企業体であることを目指しています。そこで、これまで市場のリーダーとして対応してきたマーケティング・コミュニケーション領域だけではなく、クライアント企業のマーケティング活動におけるフルファネル対応を可能とするマーケティング実践領域、新規事業や事業変革をリードするイノベーション領域にまで機能やケイパビリティを拡張し、企業のありとあらゆる課題を解決できるよう体制強化を進めています。

事業ポートフォリオの拡張

2024年3月期を最終年度とする中期経営計画においても、提供サービスの変革を掲げ、事業ポートフォリオは着実に進化してきました。現在のポートフォリオは、マーケティング・コミュニケーション領域の拡大と同時に、コンサルティングやテクノロジー領域など多岐にわたっており、クライアント企業の企業活動全体に及ぶソリューションを提供できるまでに拡張しています。
クライアント企業のビジネスの手法までもが変わっていく中で、当社グループがお手伝いできる領域も変化してきています。例えば、ECによる買い物が完全に普及した中で、モノが一番売れるのは深夜の時間帯になりました。販売店のサポート対応時間が終了した時間帯での顧客からの問い合わせにどのように対応するかといった課題が出てきました。そこで私たちはクライアントに対してコンタクトセンターやコールセンターのサービスを提供し、問い合わせ内容をデータ化したマーケティングアプローチを行うなど、具体的な生活者のニーズにダイレクトに応えるサービスまで提供するようになっています。つまり、クライアント企業のビジネスプロセスそのものに入り込んだソリューションが重要と考えたわけです。マーケティング活動を起点とした事業領域の拡大は着実に進展していますが、世の中や企業の変革のスピードを考えると決して十分とは言い切れません。クライアント企業のサービスがテクノロジーによってますます変化する中、サービス全体を一気通貫ですべてサポートできるというところまでカバーできるよう、さらなる対応を進めているところです。

“生活者データ・ドリブン”
フルファネルマーケティング

データの活用が進むにつれ、マーケティング・コミュニケーションの活動は、いわゆる運や勘に頼らず、様々な種類のデータを掛け合わせてより効率的かつ効果的に実行することが可能になりました。言い換えれば、データドリブンな手法を通じて、まさに科学的なマーケティングが実現できるようになったということです。
生活者の購買データや行動データを活かしたマーケティングでは、従来のマス広告では難しかったダイレクトなマーケティング、つまり一人ひとりに的確なメッセージを投げかけることができ、クライアント企業と生活者とのより深い関係性を構築することができるようになります。企業と企業の顧客(=生活者)とのコミュニケーションをデザインする際、土台となるデータとして、私たちが長年培ってきた生活者データが当社グループならではの強みとなります。
これまでマス広告を中心にアプローチしていた「認知」の領域に加え、認知→興味→検討→購買からその後のCRMまで一気通貫でアプローチする「フルファネル」の支援が求められていることが、マーケティング・コミュニケーション領域を超えて事業領域拡大を進めている大きな理由の一つです。私たちがグループ横断で事業領域拡大を推進していくため、2022年4月に博報堂テクノロジーズを設立しました。同社は、当社グループがよりテクノロジードリブンな企業体へと進化するためのテクノロジー基盤のコアとなるべく、デジタルマーケティング基盤の強化やAI等の先進技術のマーケティング導入などの取り組みを主導する役割を担うことになります。

イノベーション&
コンサルティングサービスの提供

クライアント企業の課題がマーケティング領域を超えて広がりつつあることを背景に、専門的かつ先進的なマーケティング手法やソリューションを提供する「専門マーケティングサービス企業」をグループ内に取り込むことで、イノベーションやコンサルティングサービスにも事業領域を拡大しています。その中心となっているのがグローバル戦略事業組織kyuです。
kyuでは、先進的・専門的なサービスを提供する企業を次々とグループに加えていますが、その選定においても、当社グループが大事にしてきた“生活者発想によるクリエイティビティ”という企業哲学・価値観に共感・共鳴し、メンバーとしてシナジーを発揮できる企業や事業であることを重視しています。
2016年にkyuの一員となったIDEOは、生活者発想と極めて近い「人間中心(Human-Centered)」という考え方に基づくデザインを通じて、プロダクト開発から企業や社会の課題解決に至るまで、実に様々な分野でイノベーションや事業成長の起爆剤となる活動を展開しています。
また、同じくkyu傘下のPublic Digitalは、国連をはじめ、各国の政府機関や民間企業のDX業務全般を支援し、短期間でゼロからのデジタル化を実現するアジャイル型のサービス推進を行うコンサルティング会社です。2022年には、都市開発領域においてグローバルなリーディングカンパニーとの評価を受けるGehlもメンバーに加わりました。Gehlは「人間を中心に据えた都市づくり」をすべての立脚点とし、その空間や周辺環境を利用する人々が抱える課題やニーズを徹底的に調査・分析した高度な戦略プラニング力を強みとしています。
また国内では、博報堂と博報堂DYメディアパートナーズの新規事業開発組織「ミライの事業室」が多様なパートナー企業と連携した事業の立ち上げに取り組んでいます。“生活者発想によるクリエイティビティ”を強みとする私たち自身がオーナーとなって主体的に事業開発を推進し、その先にある未来の生活や社会の創造を目指しています。

事業領域拡大による収益構造の多層化

クライアント企業の課題解決が私たちの事業領域拡大の最大の目的ですが、同時に領域の拡大によって収益モデルを多層化させ、安定的・継続的に成長していく企業グループとなることも目指しています。
マーケティング・コミュニケーション領域では、これまでメディアのマージンやコミッションが収益の中心でしたが、マーケティング実践領域、イノベーション領域へとサービスを拡張しながら、収益モデルもサービスフィー、コンサルティングフィー、投資事業によるキャピタルゲインや共同事業運営におけるレベニューシェアなど、実に多様化しています。また、マーケティング・コミュニケーション領域においても、AaaS(Advertising as a Service)によって従来のメディアの「広告枠」を売るビジネスからクライアント企業の事業貢献に直結する「効果」を提供するビジネスへと進化させることで、フィー型モデルのウエイトを高めています。グループ全体としてはまだまだコミッション型の収益割合が大きいものの、これらの取り組みを通じて様々な価値を提供し、収益モデルを多層化させながら、これからの事業成長を支える仕組みを実現したいと考えています。

事業領域の拡大

事業領域の拡大の図

生活者発想を基軸とする企業として
不可欠なサステナブル経営

取締役専務執行役員 江花 昭彦氏の写真

くり返しとなりますが、当社グループが最も大事にしているのは「生活者発想」です。この考え方から外れることなく、より先進的なサービスを提供していくことこそ、他社には真似できない博報堂DYグループならではの価値創造につながると確信しています。生活者発想を軸に据える上では、私たち自身が一生活者としていきいきと生活していなければなりません。そのような意味でも、サステナブル経営はどの企業よりも推進していかなければならないと考えています。
2022年4月にサステナビリティ推進室を設置し、サステナブル経営をよりいっそう推進していく体制を整備しました。当社グループにとって特に重要な課題だと考えているのは「人への投資」です。多様な人材にとって魅力的で働きやすい環境をつくることをミッションと捉え、制度や評価指標の整備に順次取り組んでいます。また、生活者発想やクリエイティビティを養うことができる機会もこれまで以上に充実させるなど、強みである「生活者発想」をベースとしたクリエイティビティの源泉である「人」に対する取り組みを重点的に推進していきます。
クリエイティビティの基本は、常に楽しいことや面白いことを考えたり仕掛けたりすることだというのが私の考えです。テクノロジーやAI等の技術革新ももちろん重要ですが、社員一人ひとりが存分にクリエイティビティを発揮できるような環境を用意することが、グループの提供価値の向上に直結するものだと考えています。