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博報堂DYグループの
デジタル戦略

取締役副社長 矢嶋 弘毅氏の写真

AaaSを基軸にDXを推進し、
新たなビジネスを創出

変化する広告業界におけるデジタル戦略を推進し、
新たな広告市場のリーディングポジションを目指します

取締役副社長

矢嶋 弘毅

デジタル時代のクライアントニーズに応じた
戦略フォーメーションを組織

広告業界はデジタルテクノロジーの進化によって、これまで約5年に一度、大きな変革に直面してきました。1990年代半ばにインターネットが普及し始め、Webブラウザ中心のインターネット広告が拡大しました。2000年代に入るとモバイル広告が生まれ、さらにゲームコンテンツが大きな人気を博しました。2005年頃にはスマートフォンが現れ、巨大なアプリマーケットが誕生しました。2022年にはWeb3.0メタバースなど、従来と異なるWebの仕組みが市場を席巻し、新たな節目となる5年の始まりと捉えることもできるでしょう。決済手段となるアプリも登場し始め、これまでになかった斬新なビジネスが次々と誕生し、それらをサポートする周辺ビジネスも大きく変化を遂げようとしています。メディアビジネスにおいては、改めて「コンテンツ」の重要性がより高まっているとも言えます。デジタル広告市場は、今や「デジタル広告」と一括りにすることはできなくなっています。検索連動型広告から動画広告、アドネットワーク広告など多岐にわたっており、それぞれが非常に専門性の高いものとなっています。各領域に特化した様々なプレイヤーも出てきている中、いかにしてクライアントのニーズに合わせた最適な組み合わせを提供するかがポイントとなっています。私たちは、総合広告会社と専門性の高い広告会社によるフォーメーションによってあらゆるタイプのクライアントに対応できる企業グループとして、こうした変革を先取りした体制の構築を進めてきています。当社グループのメディア事業を担ってきた博報堂DYメディアパートナーズを中心にしながらも、グループを横断した統合的な組織としてDXソリューションを推進するHAKUHODO DX_UNITED、グループのテクノロジー基盤開発の整備と高度化を行う博報堂テクノロジーズなどを含め、クライアントのありとあらゆる課題に対応できる戦略フォーメーションを組織しています。

メディアのIP・ID戦略に呼応し、
新たなビジネスを創出

現在、メディア各社はコンテンツホルダーとして「IP(知的財産)戦略」を進めようとしています。彼らの制作した番組や作品などのコンテンツは、自社のネットワークで放送・配信されるだけでなく、サードパーティのプラットフォームで配信されるようになってきており、コンテンツ自体をIPとして世界に向けて発信するビジネスが広がっています。さらにこのIPがデジタルプラットフォームを形成し、データが蓄積され、その上で獲得されるID(Identification)が新たなビジネスにつながるという循環が出来上がりつつあります。メディアやコンテンツホルダー企業がコンテンツプロバイダーとしてビジネスを展開する際に、私たちが、そのIP化をどのようにサポートし、ID化をどう推進し、新たなビジネスをどうやって創出するのか、とても重要な課題に直面しています。
放送局がIP資産を形成し、新聞社、出版社もIP・ID戦略へと舵を切る。メディア各社がIP・ID戦略を推進していく中で、私たちもその動きを見極め、しっかりと事業機会を捉えていきたいと考えています。

AaaSをDX戦略の中核と位置付け、
テレビとデジタルメディアの融合を図る

広告業界は、これまでの「広告枠の取引」による、いわゆる予約型広告ビジネスのモデルから、「広告効果の最大化」による運用型広告ビジネスモデルへ移行しています。そうした業界の転換期を見越して、博報堂DYグループでは、広告メディアビジネスの次世代型モデル「AaaS(Advertising as a Service)」の開発を進めてきました。
AaaSをより高度なマーケティング機能を備えたサービスにしていくために不可欠な要素が「インテグレーション」「ダイナミックデータ」「ビジュアライゼーション」です。
「インテグレーション」は、例えば、テレビの視聴率データおよびデジタルメディアのパフォーマンスデータをデータベース化し、効果測定したものを統合データにすることです。「ダイナミックデータ」は動的データの活用です。従来の広告プラニングが過去のデータ、いわば静的データを活用して次のキャンペーンで改善していくものだったのに対し、AaaSでは動的かつリアルタイムのデータを集積し、「可視化(ビジュアライゼーション)」して、同じキャンペーン中に改善施策を提供できるようになります。
AaaSは、メディアDX戦略の中核となるクライアント向けの新たなソリューションサービスとして、2023年3月期には導入企業数が前期比約2.5倍の250社超、案件数としては1,000件を超える規模にまで達しています。
事業としてのAaaSはまだ初期フェーズではありますが、ここまでは確かな成果を得ることに成功しています。今後さらなる開発を進める過程で、大事にしている要素が3つあります。
第一が安全性。プライバシーポリシーを確立し、安全性の高いサービスを提供することは極めて重要です。第二に高いパフォーマンスを達成すること。これは今後よりシビアに評価・管理されていくでしょう。そして、最後にアドバンストテクノロジーです。先端的なテクノロジーを駆使した広告サービスがまさに市場から求められています。
この3つの要素は、私たちが広告メディアビジネスを発展させるために不可欠な要素であり、次世代型モデルとなるAaaSのDNAとして組み入れているものです。
さらに、私たちはAaaSを初期フェーズから次のステージへバージョンアップさせるための準備を進めています。基本コンセプトであるテレビとデジタル分野の融合・統合という側面においては、既に有効なサービスを展開していますが、インターネットに接続されたテレビ型デバイスのCTV、屋外広告・屋外メディアであるODM(OOH)も含め、メディアのカバレッジを広げながら、より高度なパフォーマンスを発揮していきたいと考えています。また、生成AIの活用も進めています。クリエイティブ分野においてパフォーマンスの高いAIモデルを構築し、得られたデータをクリエイティブ制作にどのようにフィードバックさせていくか、より高品質のサービスをいかに提供するか、これらの仕組みをAaaSにも導入していきます。
デジタル広告の中で検索連動型広告は依然高いシェアを有してはいますが、AIの登場によって今までの検索連動型広告とは異なるモデルが生まれ、大変革を起こす可能性も高いため、しっかりと注視していかなければなりません。

AaaSによる、広告主の事業成果への貢献

AaaSによる、広告主の事業成果への貢献の図

クライアントのデータを活用した
新しいマーケティングモデル構築に挑戦

クライアントのマーケティング活動がさらに進化を遂げていく中で、AaaSをベースとした新たなマーケティング・コミュニケーションモデルを確立すべく、メディアデータを起点とした先進的なコンサルティングサービスもいっそう充実させ、フィー型のビジネスモデルを確立していく計画です。さらに、AaaSを基幹システムとして、例えばSIer企業のように他の広告会社に外販するビジネスの拡大にも取り組み始めています。また、インハウスエージェンシーに近い形でクライアント企業のマーケティングシステムにより密接に関わっていくことにも着手しており、クライアント側のファーストパーティデータを活用したマーケティングモデルの構築にも取り組んでいます。企業の顧客データと紐づいたテレビやデジタル広告等のメディア効果を統合管理するシステムをつくり上げることで、これまで以上に広告の効果を最大化することも可能となるでしょう。場合によっては、クライアント企業とのジョイントベンチャーに発展するビジネスの創造までを具体的に構想しています。

新たな広告市場における
リーディングポジションを目指して

取締役副社長 矢嶋 弘毅氏の写真

テレビの視聴者が大きく減って広告産業も衰退するという論調がありますが、私は単純にそうなるとは考えていません。テレビ、スマートフォン、タブレット端末など「メディアのモニター」という意味では明らかに増加しています。モニターがあらゆるところに存在し、テレビの視聴時間は減少しても、モニターとして見た視聴時間は確実に増えています。ですからテレビビジネスではなくモニタービジネスと捉えれば、その総視聴時間は今後も飛躍的に伸びていくでしょう。YouTubeなどもまとめてモニターの広告在庫と考えると、その量は膨大です。そう考えると、動画広告市場はいっそう拡大し、私たちのビジネスチャンスも広がっていきます。このようなメディア環境の変化と広告市場の拡大を考えると、前述したようにデジタル広告を検索連動型広告、動画広告、アドネットワーク広告などと分類した上で、動画広告をテレビ広告やODM(OOH)などと合わせた「モニター広告市場」というセグメント視点でマーケットを捉え直すことができます。そうするとその成長率は極めて高いことがお分かりいただけるでしょう。こうした考え方も含めて、メディアビジネスのDXとして開発したのがAaaSであるとも言えます。
メディアのDXとマーケティングのDXとの掛け合わせによってマーケティング・コミュニケーション領域でのリーディングポジションを目指すことが、私たちの大きな戦略の1つであり、中長期的な勝ち筋になるものと考えています。メディアのDXにおいては私たちの持つAaaSが大きな強みになっていく一方で、もう1つの軸であるマーケティングのDXにおいては、また別のプレイヤーとの仕組みを構築する必要があり、HAKUHODO DX_UNITEDを中心に急速にその体制整備を進めているところです。
5年に1度の変革の中で、Web3.0やメタバースなどによってこれまでにないリッチな体験価値を生活者に提供することができるようになっていくでしょう。私たちは2つのDXを進めながら、ビジネスモデルや組織体制の変革に挑み、激しく変化を続ける広告業界においてアップデートされていく新たな広告市場をリードしていきたいと考えています。