Integrated Report 2022
Hakuhodo DY Holdings
Integrated Report 2022

トップメッセージ

統合報告書2022 トップメッセージ

価値創造の連鎖を起こし、
社会課題解決のキープレイヤー企業へ

代表取締役社長

水島 正幸

価値創造の連鎖を起こし、
社会課題解決のキープレイヤー企業へ

私たちが目指すのは、
企業のマーケティングの進化に貢献する
価値創造パートナーであり、社会の発展に寄与する新しい価値を
創造し続ける生活者のパートナーです

私たちの変わらぬ価値観と進化し続ける提供価値

私たち博報堂DYグループは、7つの経営理念と「生活者発想」「パートナー主義」の2つのポリシーを軸とした不変の価値観に基づき、時代と社会の変化をいち早くつかみながら企業のマーケティング・コミュニケーション活動におけるプロフェッショナル集団として、従来の広告ビジネスの枠組みにとらわれることなく事業領域を拡大し、成長を遂げてきました。

独自の強みであるクリエイティビティを活かしながら、企業のマーケティングの進化に貢献する価値創造パートナーとなることで持続的な事業成長を遂げるとともに、生活者のパートナーとして、社会の発展に寄与する新しい価値を創造し続けることを目指しています。これにより、サステナビリティゴールである「生活者一人ひとりが、自分らしく、いきいきと生きていける社会の実現」を達成していきます。

持続的な事業成長と社会の発展に寄与する新たな価値創造によってサステナビリティゴールを実現していきます

提供サービスと事業基盤の変革を加速

水島 正幸

2019年5月に発表した5ヵ年の中期経営計画については、コロナ禍の影響による事業環境の変化を踏まえ、2022年2月に修正計画を発表しました。当初の計画策定時に前提としたデジタルテクノロジーの進展による生活者の情報接触行動や購買行動の変化は想定以上に進んでいますが、私たちが提唱している「オールデジタル時代」を見据えた大きな方向性に変わりはありません。戦略のアップデートと計画の見直しをしつつ、「提供サービスの変革」「変革を加速する横串機能の強化」「サステナブルな企業経営のための基盤強化」の取り組みを進めています。

特に、提供サービスの変革の柱となる“生活者データ・ドリブン”フルファネルマーケティングの実践は重要な成長ドライバーとなります。当社グループが以前から推進してきた生活者データ・ドリブン・マーケティングをフルファネル、すなわち認知、興味、検討からCRMまで一気通貫で実践できる体制にすることによって、新たな市場や価値の創造につながるマーケティングサービスの提供領域を拡張することを可能にします。

コアとなるケイパビリティとして、クリエイティビティを基軸に、膨大なデータと最新のテクノロジーを掛け合わせてクライアント企業のマーケティング進化を実現させる“価値創造型のDX”を提供する機能を着実に強化しています。

さらに、グループ子会社の機能拡充や事業拡大は、コンタクトセンターや人材サービスによる営業代行業務などのマーケティング実践領域にまで広がっており、生活者や社会の変化に合わせて企業のマーケティング活動全般をシームレスにカバーできるよう、提供サービスを拡張させています。

120年以上前に広告取次業としてスタートした当社ですが、企業としてのあり方については時代とともに変遷してきています。広告代理店から広告会社、そしてマーケティング企業となってきた私たちは、生活者をエンパワーメントする、新しいクリエイティブ産業とも言える存在になっていくと考えています。

私たちが中長期的に目指すのは、企業がマーケティング活動を進化させていく中で、クリエイティビティを駆使したあらゆるソリューションを提供する存在となることです。まだまだ道半ばではありますが、まずはフルファネルマーケティング実践に向けた機能拡張に取り組みます。

グループシナジー創出に向けて組織力を強化

当社グループはこの数年、グループ総体としての競争力を高める機能強化を行うべく、専門性や先進性の獲得を狙いとしたM&A等を通じてグループの規模拡大と業容の拡張を行ってきました。現在は、これに加え、提供サービスの変革を加速するための横串機能の強化にも取り組んでいます。

この横串機能は、多様で多面的なグループ傘下の事業会社間の連携を図りながらシナジーを創出し、全体最適の視点でグループの事業ポートフォリオを構築していくために必要な共通基盤となるべきものです。

とりわけ必須となるのがテクノロジー機能です。広告ビジネスや企業のマーケティングのデジタル化がさらに進展していく中、グループ全体のケイパビリティを拡張していくためには、優秀なエンジニアを採用・育成し、最新のテクノロジーを取り込んでいく必要があります。そこで、2022年4月「博報堂テクノロジーズ」を立ち上げました。

博報堂テクノロジーズは、グループがよりテクノロジードリブンな企業体へと進化するためのコアとなるグループ共通基盤です。まずは200人強の専門人財とともにスタートしましたが、現中期経営計画の期間中にさらに100人規模でエンジニアの採用を行い、順次機能強化を進めていく予定です。博報堂テクノロジーズ設立の最大の狙いは、これまでクリエイターやマーケターが中心となっていたチームにエンジニアが加わり、まさに三位一体で新たな市場である「生活者インターフェース市場」に向けた新サービスやソリューションを開発・提供することです。

海外事業についても、デジタル領域のさらなる強化に加えkyuネットワークの先進的な知見やノウハウを博報堂の米国現地法人やアジア地域のグループ会社に移植・共有するなどグローバル規模で横展開することで、競争力の強化や新規事業の創出を図っていく考えです。

最大の強みは「クリエイティビティ」と「生活者発想」、そして価値創造の源泉となるのが多様な人財です

“人財”こそが「クリエイティビティ」の源泉

当社グループ最大の強みはやはり「クリエイティビティ」です。広告ビジネスやマーケティング手法がどのように変わろうとも、モノやサービスを動かすためのヒトとヒトとの接点には必ずコミュニケーションが発生し、そこにはアイデアが不可欠です。卓越したアイデアがあるからこそ、消費者や生活者から選んでもらい、使ってもらうことができるわけで、そうしたアイデアの根幹にあるのがクリエイティビティなのです。

私たちのもう1つの強みは「生活者発想」です。ビジネスのフィールドがBtoBであれBtoCであれ、またどれだけデジタル技術やAIが発展しようとも、ビジネスの相手はあくまでもヒトです。どうやってヒトの心を動かし、行動に移してもらい、モノやサービスを好きになってもらうか、そのベースにあるのは生活者発想にほかなりません。

これら2つの強みと価値創造の源泉となるのが多様な人財です。社員一人ひとりが多様なバックボーンや個性を持つ「粒ちがい」として、それぞれが独自のクリエイティビティを発揮し、それをチームワークの中で高め合いながら新たな知恵やアイデアを生んでいくことこそ、我々が価値創造を行うことができる源泉なのです。

生活者発想をさらに研ぎ澄ませ、クリエイティビティの力をさらに高めていくためには、一人ひとりの絶え間ない自己研鑽によって日々成長し続ける必要があります。そのためにはグループ人財の成長をいかにして会社が支援できるかがとても大事だと考えています。成長を促す対象は若手社員だけでなく、シニア層を含めたすべての社員です。博報堂と博報堂DYメディアパートナーズでは、MBAや財務・会計分野に至る広範な学び直しの機会を提供するリスキリング・プログラムを2023年3月期より開始しています。粒ちがい人財をさらに磨き上げることで、人的資本が強化され、創出される価値も増幅し、グループ全体として成長することができます。グループに所属するすべての人財が、デジタル/テクノロジー分野やグローバル対応領域に至るまで高度なクリエイティビティを最大限発揮できるよう、短期的にはコスト先行となる施策も含めた「人財」への積極投資など、投資・育成・環境整備の観点で人財マネジメントのさらなる強化を図っています。

粒ちがい人財がクリエイティビティを最大限発揮できる環境を整えるために、「人財」への積極投資を行っています

サステナブル経営の強化に向けてマテリアリティを改訂

より中長期的な視点に立った、サステナブルな経営環境の整備も重要なテーマとして位置付けています。2022年4月に、グループのサステナブル経営をより積極的に推進する役割を担うべくサステナビリティ推進室を新設し、具体的なアクションを開始しています。
ESG領域の中で2023年3月期はまず環境の分野、気候変動対応としての気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に基づく目標設定と開示を行い、SDGsターゲットとなっている2030年とその先の脱炭素社会(カーボンニュートラル)実現目標となる2050年を見据えた企業グループとしての基盤強化に着手しました。
さらにマテリアリティの改訂と数値目標の設定、人権方針の策定を行い、本統合報告書で開示します。また、DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)に関するタスクフォースの活動を目下展開中です。
マテリアリティについては、持続的な成長のための重要課題という観点から、2021年3月期に設定した8項目をさらに見直し、整理を行うことで、3本の柱に絞り込みました。1つ目は「マーケティングの進化とイノベーション創出による新しい価値の創造」で、グループの提供価値に直結するものです。2つ目の「高度なクリエイティビティを発揮できる人財マネジメント」と3つ目の「生活者や社会との共生の実現を目指すコーポレートガバナンスの強化」は、経営基盤の根幹を担うものです。
私たちは、不変の価値観を大事にしながら、生活者や社会との共生の実現を目指す取り組みをさらに進め、企業としての持続可能性を高めていきます。

価値創造の構造とマテリアリティの位置付け

価値創造の構造とマテリアリティの位置付け

社会課題解決のキープレイヤー企業になる

水島 正幸

私たち広告業界の歴史は、新聞・雑誌といった紙媒体の時代から音声媒体であるラジオ、映像媒体であるテレビ、さらにはインターネットの登場による急速なデジタルメディアの進化といった、新しいメディアと人々のコミュニケーション手段の誕生とともに移り変わってきました。そのたびに業界に携わる多くの人が自分たちの仕事に不安を感じたとも言われますが、同時に新たな広告手法やマーケティング施策も次々と開発されてきました。
ビジネスの環境が不安定になるのは、実は常に起こってきたことであり、だからこそ新たな道を切り拓く者に次なるチャンスが舞い込むのです。変化が激しい世の中で、社会や企業の課題は日に日に複雑化していますが、その変化をいかに面白がることができるかどうかが鍵ではないかと思っています。そして、当社グループに所属する人財の特長はそうした変化を誰よりも面白がることができることにあるのです。より難しい課題や複雑な問題を目の前にすると自然とワクワクする人たちが多く、その中でアイデアを出し合い、新たな企画をつくり、実現するために生みの苦しみをともに味わいながら、一緒にゴールを目指していくことを楽しめる、そうした企業風土が当社グループ最大の特長だと言えるでしょう。
グループ全体の規模が拡大する中、多種多様な機能を組み合わせながら、時代の変化によって生じる新たな課題を解決するための新しいアイデアを創造し、アウトプットまで実装を行い、ソリューションを実現させる過程でグループのシナジーが生まれる、そうした“知の連鎖”を起こしていくことが、クライアント企業やすべての取引先企業、株主、社員を含めたあらゆるステークホルダーにとって最も価値あることだと信じています。
私たち特有の粒ちがいとチームワークを大事にする企業文化はこの先も維持・強化していきながら、どこにも負けない“未来をつくるクリエイティビティ”を発揮できる企業であり続けます。そして、難易度が高いと言われるような社会課題を解決するキープレイヤー企業として、社会から頼りにされる存在でありたいと考えています。

代表取締役社長

水島 正幸