
博報堂の官民共創クリエイティブスタジオPROJECT_Vegaによるイベント「共創クリエイティブ教室」(Co-Creation Creative Class=略称CCCC)が、東京都立大泉高等学校附属中学校で、2025年1月から3月にかけて行われました。本イベントは、「中学生×企業×クリエイターで、社会課題に別解を。」をテーマに、中学生を主役にして、企業の課題に対する彼らのアイデアの社会実装を目指すものです。今回、ソフトバンクが課題提示企業として参画。博報堂からPROJECT_Vega エグゼクティブ・クリエイティブディレクターの近山を中心に6名のクリエイターと、ソフトバンクからは13名の社員が生徒たちの伴走メンバーとして参加しました。本記事では、全5回プログラムの初回と最終プレゼンの様子についてレポートします。
博報堂 PROJECT_Vega エグゼクティブ・クリエイティブディレクター 近山知史
博報堂 PROJECT_Vega クリエイティブディレクター 塩見勝義
博報堂 PROJECT_Vega クリエイティブディレクター 山﨑博司
ハッピーアワーズ博報堂 アクティベーションプラナー 浅倉涼花
博報堂 クリエイティブ局 デザイナー 梶川裕太郎
博報堂 PR局 PR プラナー 藤波真由
■ソーシャルインパクト×ビジネスインパクト アイデア立案に向けたイントロダクション

イベント初日、近山は「社会に影響を与えるソーシャルインパクトだけではなく、ビジネスインパクトを意識してください」と生徒たちに語りかけました。社会課題の解決に加えて、ソフトバンクのビジネスとしても成立するアイデアを立案する。つまりは「ダブルインパクト」を目指すという、ハードルの高い課題を与えました。近山は「これは大人が考えても難しいことですが、中学生の発想を掛け合わせることで、今までにないものが生み出せると思います。私もすごくワクワクしている」と、期待を込めました。
生徒たちは5グループ各5班、計25チームに分かれて、企画を立案。グループごとに博報堂クリエイターとソフトバンク社員が担当について生徒たちをサポートする体制で、最終プレゼンでの発表に向けてアイデアを段階的に練り上げます。まずは複数のアイデアを出し合ってから各グループ1案に絞り、最終プレゼンを迎えるという段取りで行われます。考え方のポイントとして、近山より「①見立て(どこに着目するか)、②アイデア(何を考え、どう実行するか)、③推しコメント(自分たちの別解のポイントを述べる)」と説明しました。
さらに、ソフトバンクが本気で採用したいアイデアが生まれたら、賞金を出して買い取る旨が発表されました。「賞金を出していただく理由は、ただ競争心を生むためではなく、本当にいいアイデアは大きな価値を生むことを実感してもらいたいからです」と近山は強調します。
ソフトバンクが提示したテーマは、「お父さんお母さんが『小学生の子どもにスマホを買ってあげたい!』と思える社会課題解決につながる新しいサービスアイデア」。なおかつ、ソフトバンクの収益になるプランであることが求められます。審査のポイントは「アイデア、ストーリー、ソーシャルインパクト、ビジネスインパクト」です。
その後行われた質疑応答では、「なぜ、ターゲットを小学生の子供と設定したのか?」「学年は何年生でもよいのか?」「親が子供にスマートフォンを持たせたくないと考える理由は?」など、生徒から質問が活発に寄せられ、意欲的な姿勢を強く感じさせると同時に、ソフトバンクからの回答をアイデア考察のヒントにしていきました。

全体でのイントロダクションの後は、5つのグループごとに教室に移動し、解決したい課題を紙に書き出すことから始めていきます。サポートについた博報堂のクリエイターからは「子供たちのため、家族のためになることを率直に書き出してみよう」、「こんなこと、できなさそうと思わずに突拍子のないアイデアでも構いません」などとアドバイスがありました。特に「このアイデアを実現した時に、誰が本当に喜んでくれるのかを一番に考えてください」との助言を受けて、生徒たちもそれぞれの視点で自由に発想していきました。

初日は、チームごとにアイデアを思いつく限り出し合い、グループで全案を共有。以降はDAY2,DAY3,DAY4と段階を経ながら各チームが渾身のアイデアを練り上げていきます。博報堂のクリエイターとソフトバンク社員が、生徒を全力でサポートし、最終プレゼンを目指していきました。
■25チームによる白熱の最終プレゼン。制限時間3分の大勝負
そして迎えた3月19日。全25チームが集結して最終プレゼンが行われました。ソフトバンクと博報堂から合わせて6名が審査員として参加。最終プレゼンに際し、近山より3分間の制限時間を厳守することと、「とにかく、元気よく、迷ったら面白いほうで!別解の発想で楽しく今日のプレゼンに臨んでください」との激励があり、スタートしました。

「高齢者の孤独」「習い事格差」「子どもの睡眠不足」「学校での防犯意識」「若者の理系離れ」など、各チームよりさまざまな社会課題が掲げられ、目の付けどころにも発見が溢れるアイデアが多く発表されていきました。いずれの発表も統計データを活用したり、広告展開による収益見込みを数値化したりと、数字に基づいたビジネス視点も組み込んだ説得力のある内容に仕上がっています。またアイデアの内容に加えて、興味を引く発表資料となるように趣向を凝らしたり、寸劇やジェスチャーの活用、大事な部分はグループ全員で声を合わせたりと、工夫が凝らされ、各チームともに完成度の高い、力のこもったプレゼンが行われました。

各チームの発表後には、担当である博報堂のクリエイターよりそのアイデアの推しポイントが述べられます。「子供と両親双方の視点で機能や使い勝手まで考慮されたサービス」「中学生らしい面白い着眼点が活かされている」「実際の広告でも使われるリアルな手法を考案できている」等、審査員に向けて生徒たちのプレゼンを後押ししました。

どのチームも白熱したプレゼンを繰り広げ、ユニークな視点かつ、ソーシャルとビジネス双方のインパクトをクリアできるものとして練り上げられており、生徒たちの豊かな発想力が活かされていました。
■グランプリ1チームを選定。秀逸なプランの社会実装を推進。
全25チームのプレゼンが終了し、審査員による厳正な審査を経て、いよいよ結果発表です。ゴールド賞1チーム、シルバー賞2チーム、ブロンズ賞3チームを選定、さらに生徒たちの投票1位のチームにも「生徒賞」が贈られました。見事ゴールド賞に輝いたチームには、審査員からは「一歩抜け出ていた。課題設定も内容も現実味があり、画面を作って見せてくれた点もイメージを想起させるもの。我々にとっても現実にできそうだと思えた。たった3分間でも人の心を動かせることを証明してくれた」と講評がありました。

さらに、グランプリ受賞チームには、ソフトバンクより賞金が贈呈されました。審査員は「完成度が高く、アイデアとして秀逸だった。全体を通して、格差や高齢者の問題、災害や環境といった様々な社会課題を深く考える機会にもなったと思う。皆さんは10年も経たないうちに社会の第一線で活躍することになるので、今回の経験を大いに生かしてほしい」と総括しました。本アイデアは、今後ソフトバンクで事業化に向けた取り組みが進められる予定です。グランプリに輝いた班の生徒は、「みんなと一緒に挑戦して、賞までいただいて本当に満足している」と感想を語りました。

最後に、同校担当教諭の三好健介先生より、「実社会に出た時に本当に使える学びを子供たちにどう提供するかを常に考えている。学校内の授業だけでは、そのような学びを実現するのが難しかったが、今回ソフトバンクと博報堂の皆さんの協力を得て、普段授業で学んでいることが実社会で本当に役に立つことを感じられたと思う」との言葉が送られました。
■「実際に社会に出るアイデアを作る楽しさ」生徒たちからの感想
参加した生徒たちからは、「チームのみんなと協力でき、小さなアイデアを大きなアイデアにかえることができた」「『アイデアを生み出して実現させよう』という経験をすることができて、探究をすることが今までよりも楽しくなった」「中2では実現が難しいと思われる解決策(アクション)を、企業と協力し実際に形にする、という活動がとても魅力的で、主体的に楽しみながら取り組めた」「自分たちが作り出したアイデアをふまえて、(博報堂・ソフトバンクのメンバーが)その良さをさらに引き出せるようなアドバイスをしてくださり、新たな学びになった」「社会に出るかもしれないアイデアを考えることができるのが楽しかった」といった感想が寄せられました。
今後は、今回考案されたアイデアをさらにブラッシュアップし、実装に向けて進めていく予定です。
「共創クリエイティブ教室」(CCCC)は、「中学生の自由な発想」と「社会が求めるホンモノの課題」と「博報堂の発想技術」を掛け合わせることで、心が動くソリューションと人が動くムーブメントを生み出すことを目指して、今後も取り組みを継続していきます。