博報堂DYグループが2008年から続けている「アスリートイメージ評価調査」では、これまでアスリート約520人のイメージを博報堂DYメディアパートナーズが独自に開発した29項目で調査し、主にCMキャスティングの際の基礎データとして、さまざまなシーンで活用してきました。本調査を企画している、博報堂DYメディアパートナーズ ナレッジデザイン局の武方浩紀が、今回は「誠実な」アスリートの10年を振り返ります。
アスリートを広告に起用する意味とは?
「アスリートを広告に起用するのと、タレントを起用することの違いはなんでしょう?」
アスリートイメージ評価調査を担当することとなった時に聞かれた質問です。そのとき未熟にも即答できず、思いつくまま「勝つために一生懸命がんばります!というその前向きな姿勢が生活者に伝わっているはずです」とお答えした覚えがあります。それがきっかけとなり、アスリートが起用された広告の評価を調査しようと思いました。
アスリートイメージ評価調査には各回で独自質問ができるアドホック調査パートがあります。その時点で話題になるスポーツイベントの評価、新しい競技の認知度など、さまざまな項目を調査し、広告の提案に活用しています。
そこでアスリート・タレントが出演した広告に対する印象を調べてみました。但し、一般的な広告調査のように具体的な素材画像などは提示していません。あくまでも生活者の意識レベルでの回答にとどまります。

アスリートの出演広告に対する評価として数値が高かったのは、「広告を信じられる(32.8%)」「広告に共感できる(32.7%)」「広告が目立つ(32.0%)」が上位3項目になりました。俳優・女優の出演広告などと比べても、その上位3項目に加えて「広告に説得力がある(29.8%)」といった項目が高くなりました。
調査結果からの示唆として、やはりアスリートの競技に挑む姿勢や前向きな言動は広告に「信頼」や「共感」を与えているということが言えそうです。アスリートは競技で活躍することが当たり前なので、勝ち負けや試合の結果で生活者のイメージ評価に影響を与えます。アスリートが競技終了後のインタビューなどで発する言葉に少なからず感動を覚えた方も多いと思いますが、ウソ偽りのない、全ての力を出し切った姿が、企業や商品メッセージの伝達にも好影響を与えるのではないでしょうか。
イメージ項目「誠実なアスリート」、この10年の変化は
アスリートイメージ評価調査の29項目のイメージのひとつに、「誠実な」アスリートがあります。10年を振り返ると1位になったのは2008年王貞治(野球)、2009年朝原宣治(陸上)、2010年・2011年石川遼(ゴルフ)、2012年・2013年川内優輝(陸上)、2014年~2017年の4年連続で長谷部誠(サッカー)となりました。

長谷部誠は、2008年にブンデスリーガ(ドイツリーグ)に移籍し、現在所属するクラブではリーダーとしてボランチやディフェンスで活躍しています。長年、日本代表のキャプテンとして、ピッチ上で見せるプレーや指示で絶大な信頼を寄せられていました。2011年におこった東日本大震災では、自分の著書の収入を全額寄付するなど社会的な責任も果たしているアスリートです。アスリートとして、社会の一員として高く評価されている結果と思います。
長谷部選手をはじめ、「誠実な」アスリートにはいろいろなタイプの選手が選ばれていますが、熱い思いを持ちながらも信頼され、その選手についていこう、と思わせるようなアスリートが選ばれています。
アスリートイメージ評価調査には、29のイメージ項目があり、長谷部選手に関しては、今回は「誠実な」を取り上げていますが、「リーダーシップがある」というイメージ項目でも常に上位にランキングされています。今までにないアスリートのイメージを調査・分析することで、アスリートのキャスティングの可能性は、今後も広がっていくと思います。
■プロフィール

武方浩紀
博報堂DYメディアパートナーズ
ナレッジデザイン局
1995年博報堂入社。初任配属は事業本部。2004年メディアマーケティング局兼ラジオ局複属。現在はナレッジデザイン局情報マネジメントグループ。
主にメディアやコンテンツの調査分析及びデータ開発に従事。最近のマイブームは「家族の時間」。
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