株式会社博報堂DYホールディングス(本社:東京都港区、代表取締役社長:西山泰央、以下 博報堂DYホールディングス)は、同社の研究・開発部門マーケティング・テクノロジー・センター(MTC)に所属する猪谷誠一上席研究員及び須藤修中央大学国際情報学部教授による共著論文が、法学分野の主要ジャーナルのひとつである「International Data Privacy Law(以下、IDPL)」(Oxford University Press)に原著論文として採択されました。
IDPLは、Clarivate社によるJournal Citation Reportに採録されている法学分野の学術誌434誌中上位53位(2024年インパクトファクター 1.9)、ScopusのSJR※ランキングでも法学分野1089誌中95位(2024年SJR 0.850)を有しており、プライバシー法分野だけでなく、法学全体で見てもインパクトの高い主要な学術誌です。
■研究の背景
MTCではマーケティング全般に関わる技術を幅広く研究・開発しており、大学・学術機関との連携も含め、様々な課題に取り組んでいます。日々進化するマーケティングテクノロジーやアドテクノロジーをビジネスに持続可能な形で用いるためには、生活者のプライバシーへの配慮や世界各国のデータ保護法への理解が不可欠です。そのような課題意識に基づき、MTCでは生活者データを適正に活用するための法や倫理に関する研究を2013年から続けてまいりました。
EUの一般データ保護規則(GDPR)を契機に、日本でもデータ保護への注目が高まり、近年では個人情報保護法の目的やデータ保護の範囲、基本概念など、制度の根本を問い直す動きが活発となってきました。本論文は、こうした問い直しの一環として、個人情報取扱事業者の概念が作られた経緯を明らかにし、その影響について論じています。
また本論文は、博報堂DYホールディングスの人材開発プログラムの下、2023年に中央大学大学院国際情報学研究科修士課程に入学した猪谷研究員の修士論文の一部にもなっています。
■論文の概要
タイトル: Ignored Discrepancies in the Fundamental Concepts of Data Protection Laws in Japan and the EU
掲載誌: International Data Privacy Law (Oxford University Press)
著者:猪谷誠一(株式会社博報堂DYホールディングス/一般財団法人情報法制研究所)・須藤修(中央大学国際情報学部)
DOI: 10.1093/idpl/ipaf015
本論文では、個人情報保護法における「個人情報」及び「個人情報取扱事業者」とGDPRにおける「personal data」及び「controller」がどのように異なり、その差が実際のデータ保護に与える影響を論じました。加えて、一般財団法人情報法制研究所が保有するわが国の個人情報保護法制に関する10万ページを超える政府開示資料や政府検討会議事録に基づいて、個人情報取扱事業者の概念が生まれた経緯も明らかにしました。
■今後の展望
生活者の権利や社会の利益をより適切に保護するため、データ保護法制の在り方に関する検討は今後も国内外で活発に行われると考えられます。その中で個人情報取扱事業者の位置づけを包括的に明らかにする本論文が活かされることを期待しています。MTCは今後もマーケティングテクノロジーの適正な発展と社会実装に貢献するため、研究・開発に努めてまいります。