~メタボ健診で健康リスクがあると判断された人では体重-1.5kg等さらに数値が改善、職域での健康格差是正につながる可能性にも期待~
株式会社博報堂DYホールディングス(東京都港区、代表取締役社⻑:⽔島正幸)は、社会と健康との関係を研究する京都大学大学院医学研究科社会疫学分野とともに、行動科学に基づいたインセンティブ・ゲーミフィケーションといったエンターテインメント性のある健康プログラム「健診戦」を通じた共同研究を実施してきました。「健診戦」に参加した人では、参加しなかった人に比べてメタボリックシンドロームの検査値が改善することを実証し、本研究に関する論文が予防医学と公衆衛生分野において有力な国際学術誌、Preventive Medicine.2022 Novに掲載されますのでお知らせいたします。
現在、日本で行われている特定健診・特定保健指導はメタボリックシンドローム対策として行われています。しかしその効果は必ずしも明らかではなく、より効果的なプログラムの開発が期待されています。本研究は、博報堂DYホールディングスが開発した、コミットメント、インセンティブ、ゲーミフィケーションなど行動科学の要素を複数活用し、多くの企業で実施されている定期健康診断を社員が楽しめるような工夫を取り入れた健康プログラム「健診戦」の効果を検証しました。分析の結果、「健診戦」に参加した人では参加しなかった人に比べて、メタボリックシンドロームの検査値が改善したことがわかりました。特に特定健診(メタボ健診)で健康リスクがあると判断された人のうち、「健診戦」に参加した人では検査値の改善幅が大きいことがわかりました。行動科学の要素を組み込んだ健康づくりプログラムにより、多くの企業で実施されている健康診断を社員の健康改善への意識・行動変容を促進させる仕組みとしても活用ができ、メタボリックシンドロームの改善に繋がる可能性が示唆されました。
「健診戦」で使われた社内プロモーション例や健康改善度フィードバックグラフィック例
■本研究の背景
日本ではメタボリックシンドロームの対策に焦点を当てた特定健康診査(健診)が行われています。これまでの研究で特定健診・特定保健指導の効果は必ずしも明らかになっておらず、より効果的な保健プログラムの開発が必要とされていました。また管理職や一般職などの職位、雇用形態などは働く人の健康状態に関連し、職域での健康格差に繋がることが報告されています。そこで本研究は、(株)博報堂DYホールディングスが開発した、エンターテインメント性やゲーミフィケーション、コミットメント、インセンティブなど行動科学の要素を複数活用した健康づくりプログラム「健診戦」に注目し、プログラムに参加することがメタボリックシンドロームの改善に繋がるか、職域での健康格差是正に繋がるか検証しました。
■対象と方法
博報堂DYホールディングス、博報堂、博報堂DYメディアパートナーズで2019年に実施された、全従業員が任意で参加できる行動科学に基づくプログラム「健診戦」に参加した1509名と参加しなかった2188名の計3697名(男性2818名、女性879名、平均年齢40.7歳)の従業員を対象にプログラム参加の有無とメタボリックシンドローム関連指標改善の関連を分析しました。年齢、性別、職種、雇用形態、職位、プログラム開始前3ヶ月の総労働時間、睡眠時間、運動習慣、喫煙状況、飲酒習慣、行動変容段階の影響は傾向スコア逆確率重み付け(IPTW)を用いて調整しました。2018、2019年度の健診データを用いて差の差分析による統計学的な評価を行いました。
■結果
プログラムに参加した従業員では参加しなかった従業員に比べて体重、腹囲、BMI、血圧が減少したと推定されました。特に特定保健指導対象者では体重、腹囲、BMI、LDLコレステロールの検査値がより大きく減少したと推定されました。また職位や年齢関係なくプログラムに参加した従業員では同じく検査値の減少がみられました。
■結論
職位や年齢関係なく、行動科学に基づくプログラム「健診戦」に参加した従業員は参加しなかった従業員に比べて、健診結果(体重、肥満、腹囲、血圧)の改善が見られました。特にメタボ健診で健康リスクがあるとされる特定保健指導対象者において効果的である可能性がわかりました。
■本研究の意義
行動科学の要素を活用した職域での健康づくりプログラムは働く人の心血管疾患対策として有用かもしれません。また職域での健康格差是正に繋がる可能性も示唆されました。
■発表論文
Nagata H., Sato K., Haseda M., Kobayashi Y., Kondo N. A novel behavioral science-based health checkup program and subsequent metabolic risk reductions in a workplace: Checkup championship. Preventive Medicine. 2022 Nov; 164:107271.
https://doi.org/10.1016/j.ypmed.2022.107271
【健診戦®(けんしんせん)について】
「健康経営⽀援プログラム」開発に向けた社内実証実験を2019年8⽉にスタート。9⽉実施の博報堂DYホールディングス・博報堂・博報堂DYメディアパートナーズの定期健康診断においてヘルスデータ(本実証実験への参加を希望する従業員個⼈単位のデータ)を取得し、前年度の⾃⾝の健康数値と今年の健康数値を⽐較、その改善度を点数化・表彰化することで、従業員が楽しく参加でき、健康改善のモチベーションと健康診断結果の向上をサポートする施策です。
■ ニュースリリース(2019 年 8 ⽉ 5 ⽇)
博報堂DYグループ、従業員のヘルスデータを統合して活用し、健康経営を支援する「健康経営支援プログラム」開発に向け、社内実証実験(POC)を2019年8月から開始
https://www.hakuhodody-holdings.co.jp/news/corporate/2019/08/2291.html
■ ニュースリリース(2019 年 12 ⽉ 9 ⽇)
博報堂DYグループ「健康経営支援プログラム」開発第一弾 "定期健康診断の結果をヘルスデータで可視化し、 社員の健康増進を促す"『健診戦』の結果速報を公開 参加者の78.9%が健康維持・改善を達成!
https://www.hakuhodody-holdings.co.jp/news/corporate/2019/12/2460.html
■ ニュースリリース(2020 年 11 ⽉ 30 ⽇)
博報堂DYグループの健康経営支援プログラム「健診戦®」が 厚生労働省「第9回健康寿命をのばそう!アワード」において厚生労働省健康局長優良賞を受賞
https://www.hakuhodody-holdings.co.jp/news/corporate/2020/11/2883.html