2021.03.31

自分のクリエイティビティを信じてみる。
「好き!からはじめるSDGs」ワークショップ@青稜中学校

  • クリエイティブ
  • ワークショップ
  • 教育
  • レポート
自分のクリエイティビティを信じてみる。好き!からはじめるSDGsワークショップ@青稜中学校 - 写真1

SDGsを授業で取り上げる、
ひとつの方法を探りに。

好き!からはじめるSDGsモノ、場所、人、競技、趣味、...なんでも!自分の「好き」からSDGsを達成する方法を考えて、ワクワクするアクションを作ってみよう。

2020年8月31日、東京都品川区にある私立青稜中学校。
中学2年生・3年生の生徒たち50人とともに「好き!からはじめるSDGs」ワークショップを開催しました。

これは、私たちの活動であるQ&Action SCHOOLーー社会課題に対して自らの視点で問いを立て、解決策を考え抜き、実行に移すプロセスを、博報堂DYグループの有志社員がサポートする場ーーの第1回を、青稜中学校の特別ゼミの一環として実施させていただいたものです。

大人だけでも子どもだけでも達成できない。大人も考え中の目標。だから一緒に考えてほしい。今日はみんなの力を借りにきました。
SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS

このワークショップのゴールは、SDGsを知識として習得することや、遠く知らない国の課題を学ぶことではありません。もちろんそうした活動や授業もベースとして重要ですが、今回は、これからの世界を担っていく子どもたちが「自分の持つクリエイティビティの力で、SDGsの達成に一歩近づくことができると実感すること」をゴールにしました。

そのために、最も興味と情熱を持つことができる自分の「好き」を見つめることから始めます。そして、自分の好きな「もの」や「こと」とSDGsの接点を見つけ、どうしたら達成に近づけられるのだろう?と知恵を絞って考えます。

100分間の授業の最後には、思いもよらなかった驚きのアクションがいくつも生まれました。このレポートでは、それに至るまでの過程と、授業の様子をご紹介します。

※新型コロナウィルス感染症の感染拡大防止の観点から、教室に入るスタッフの数を最小限にするため、10名の博報堂DYグループの有志社員が現地ではなくZoomを通して教室に設置したiPadに入り、運営をサポートしています。

STEP.1
自分の「好き」を見つめる、分解する。

STEP 01 「好き」を分解してみよう #好き!からはじめるSDGS
STEP.1 自分の「好き」を見つめる、分解する。 - フリップ1

まずはSDGsとは一見関係のないワークからスタート。真っ白な紙の真ん中に、自分の好きなものをキーワードとして書き、関連する言葉や要素を樹形図のように広げていきます。

STEP.1 自分の「好き」を見つめる、分解する。 - 写真1

生徒たちの「好き」は本当に十人十色。教室を回っていると「陸上」「ダンス」といった部活動、「K-POP」「ドラマ」「パソコン」といったエンタメ、「焼肉」「寝ること」といった成長期らしく微笑ましいものまで。そこから、その「好き」をとりまく場所、材料、人、道具などを連想していくのですが、制限時間の間ほぼペンの音が途切れないほど、どんどんキーワードが広がっていきました。やはり「好き」に対するエネルギーは計り知れないようです。

STEP.1 自分の「好き」を見つめる、分解する。 - 写真2

書けたら、グループに共有。好きなものは日々調べたり、友達と話したり、活動したりしているので、知っていることが沢山あります。SDGsをかけ合わせる下準備としてのワークですが、「この同級生はこんなものが好きだったんだ!」と、ダイバーシティを感じ合う場面になりました。

STEP.2
SDGsと組み合わせてみる。
アクションを作る。

STEP 02 好き!からアクションを作ろう #好き!からはじめるSDGS

「好き」が広がったら、次はSDGsと組み合わせて、実際のアクションを作っていくワークへ。
SDGs17目標のすべてを取り上げるのが理想ではありますが、今回は時間の制限もあり日本の達成率が低い3つを取り上げました。事前に17目標について勉強している場合には、どれと組み合わせてもOK、としても良いですし、みんなの関心が高い1つの目標があれば、それと組み合わせるのも良いかもしれません。

今回は、この3つの目標と自分の「好き」のキーワードとを組み合わせたらどんなことができるだろう?と自由に発想を膨らませます。

STEP.2 SDGsと組み合わせてみる。アクションを作る。 - フリップ1
5 ジャンダー平等を実現しよう
13 気候変動に具体的な対策を
14 海の豊かさを守ろう

例えば、「K-POPのライブグッズ」×「#13 気候変動に具体的な対策を」で、リサイクルできる素材のライブTシャツを作る。「マンガ」×「#14 海の豊かさを守ろう」で、海の絶滅危惧種が主人公のマンガを作って、興味のない人にも知ってもらう。

一見関連性のない2つを掛け合わせ、0から1を生み出す難しいステップです。案の作り方の説明に足りないところもあり、正解のないワークに生徒たちも初めは悩んでいましたが、コツを掴んだのか、制限時間の後半には2つ以上のアクション案を作っている生徒たちも出てきていました。

STEP.2 SDGsと組み合わせてみる。アクションを作る。 - 写真1

書けたら、再びグループに共有します。少し照れながらも、同級生たちとiPadの向こうのスタッフに発表。同級生はお互いの案に感心しながら、博報堂DYグループの有志社員からは「こういう着目点がいいね!」「それってこういうことかな」「こうしたらどうだろう?」といった整理やアドバイスを行い、ワークをサポートしていきました。

結果として、3つのSDGsの中でも「#5 ジェンダー平等を実現しよう」とかけあわせたものが多いのが印象的でした。大人の世界だけではなく、中学生の世界にもジェンダーの不平等が今もあることを、私たちは改めて気付かされたのでした。

STEP.3
思いつきで終わらない。
実行するには?を考える。

STEP 03 アクションプランを描こう #好き!からはじめるSDGS

個々人の案をグループで共有した後は、「やってみたい!と思うアクション」という基準で1案選び、今度は実行するためのアクションプランを作ります。

STEP.3 思いつきで終わらない。実行するには?を考える。 - フリップ1

Q&Actionの「Action」の部分であり、本来は生徒たちが実際に実行することが理想です。ただ、授業時間が限られる中では「いつ、どこで、誰のために、具体的には何を、どうやって」まで考えを巡らせ、議論することで「Action」の疑似体験としました。

STEP.3 思いつきで終わらない。実行するには?を考える。 - 写真1

ひとつひとつを具体化していくこの過程は、大人でもなかなか苦悩の多いものです。「みんなに参加してもらうには、いつ開催したらいいんだろう?」「朝の時間帯かな」「季節は秋かな」などと生徒たちの間で知恵を絞って考えていました。
議論に詰まったグループには、iPadからスタッフが援護。「会場はどこがいい?」「誰かに協力をお願いしたいね」など、答えを渡すのではなくアシストをしていきます。

最後の1秒まで考え抜こうとした生徒たち自身はもしかすると気づいていないかもしれませんが、前のステップでは「思い」や「案」だったものが、実行に向けて具体化することで、着実に「行動」や「形」に変わっていっていました。

熱のこもった8つのアクション、発表。

熱のこもった8つのアクション、発表。 - 写真1

最後に、教室全体に各グループが発表します。
どんな「好き」と「SDGs」を組み合わせたのか、どんなアクションプランができたのか。
50人全体とスタッフに囲まれて少し緊張気味ではありましたが、考え抜いたアクションを力強くプレゼンしてくれました。

発表されたアクション一覧

  • 全人類が着られる舞台衣装

    性別や体型にとらわれず、自由に着られる舞台衣装を作りたい。

  • ジェンダーレスドラマ

    様々なジェンダーの人が登場し、みんなが楽しめるストーリーを作りたい。

  • 袋まで食べられるお菓子

    みんなが大好きなお菓子の袋を食べられる素材で作りたい。

  • 生産量>消費量のエコライブ

    太陽光や人の動きなどで、エネルギーの消費より生産が多くなるライブをしたい。

  • ゴミ拾い焼肉祭

    秋の朝にゴミ拾いをすると、その重さに応じて焼肉が食べられる(!)イベントを開催したい。

  • 男子も入りやすいダンス部へ

    ダンス部には現状女子ばかり。ダンス=女子のもの、という考えをなくし、男子も入ってもらうことでダンスの幅を広げたい。

  • 男子XX部、女子XX部の撤廃

    部活名には慣習的に男子・女子とつけられているが、それを撤廃することでどちらに入ればいいか分からない、という生徒の苦悩をなくしたい。

  • LGBTQを学ぶプリンセス
    アニメ

    世界的に有名なプリンセスアニメを通じてLBGTQを学べるコンテンツを作りたい。

どれも「舞台」「ドラマ」「お菓子」「ライブ」「焼肉」「ダンス」「部活」「アニメ」といった生徒たちの「好き」から発想されたもの。それゆえなのか、驚きだったのは、全てのアクションに生徒たちらしい発見があることでした。

部活動や舞台衣装に潜んでいるジェンダーギャップ、ライブ活動やお菓子といった娯楽によるエネルギー消費、そして自分たちが心から楽しめるドラマやアニメ、焼肉を通じた課題解決……。実は、ワークショップを実施するまで、果たして生徒たちが「好き」とSDGsとの接点を見つけることができるのか、そしてそれがどのようなものになるのかは分かりませんでした。結果として生徒たちは確実にその接点を見つけ、自分たちがやってみたい!と思うアクションに落とし込み、自信を持って教室全体に発表しています。

当初のゴールであった「自分の持つクリエイティビティの力で、SDGsの達成に一歩近づくことができると実感すること」を達成できたのではないかと思えた瞬間でした。

最後に、Q&Action SCHOOLの
これから

最後に、Q&Action SCHOOLのこれから - フリップ1

Q&Action SCHOOL第1回は、このように実施を終え、青稜中学校・高等学校の校長である青田泰明先生からは次のようなコメントをいただきました。

「生徒たちの若者らしい視点や感覚が、博報堂DYグループの皆さんのファシリテーションによって、とても面白いSDGsアクションに結び付いたと感じています。日ごろの授業とは異なる知の刺激に対して彼らが想像以上に積極的だったこと、また、創造的な活動を心から楽しんでくれていたことも、本当に嬉しく思いました。」

子どもたちが自分の視点と創造性を生かしてSDGsを考えられる一つの授業の形として、「好き!からはじめるSDGs」ワークショップは力を発揮することができたようです。

スタッフの遠隔参加などテクニカルな挑戦もあった中、一生懸命に参加してくれた生徒の皆さん、ご協力下さった教員の皆さまに心より感謝申し上げます。
生徒の皆さんには、どれも素晴らしいアクションだったので、ぜひ授業の一貫で終わらせずに実現させて欲しい!と願ってやみません。

今回は博報堂DYグループの有志社員が直接ファシリテーションを担当させていただき、ワークショップ内容に関してもサポートの体制に関しても多くの学びを得ました。
今後、Q&Action for SDGs事務局はこの「好き!からはじめるSDGs」ワークショップを実施させていただける別の場所や機会を探しながら、どなたでも活用できるようフォーマット化・公開し、もっと多くの学生たちにお届けできるよう準備を進める予定です。

引き続き、どうぞ宜しくお願い致します!